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心臓血管外科センター センター長:熊田 佳孝

急増している閉塞性動脈硬化症(ASO)

近年、透析患者さまの高齢化や透析の長期化、また糖尿病の腎臓障害で透析をされる患者さまの増加により、足の動脈硬化である「閉塞性動脈硬化症」を合併した患者さまが急増しています。閉塞性動脈硬化症による足病変は初期には気づきにくく、また、どこの病院に行ってよいかわからず、早期発見が遅れて足の切断を余儀なくされる方も少なくありません。 足を切るというのは患者さまはもちろんでしょうが、医師も大変つらいものです。足のトラブルを早く見つけ、早く治療すれば、多くの足を、そして命を救えるのではないか。そうした考えから10年前に「日本フットケア学会」を立ち上げ、重篤な足病変に有効なフットケアの普及に努めています。

なぜ、早期からのフットケアが重要なの?

image01[1] 傷の原因になりやすい爪を切る、 かかとの角質を処置する、傷が 見つかったら小さいうちに治療 するなど、定期的なフットケア を行うことで足病変の芽を摘み 取ります。

閉塞性動脈硬化症では、足の動脈が狭くなったり、詰まったりした結果、血液の流れが悪くなり、足が冷たい、しびれる、間欠性跛行(歩くと足が痛み、しばらく休むと治る状態)などの症状が出てきます。しかし、透析患者さまはあまり動かず、外出も少ないので、間欠性跛行のような虚血症状も自覚しにくい状態にあります。さらに糖尿病のある方は痛みやしびれの感覚が鈍くなるため、傷や火傷に気づかずにいることもあります。体の免疫力も弱くなっているため、はじめは小さく浅い傷であっても、短期間のうちに悪化し、最悪の場合、足の潰瘍や壊疽を起こして、足を切断しなければならないこともあります。足切断は生活の質が大きく損なわれるだけでなく、生命予後にも重大な影響を及ぼします。そうならないためにも、我々医療者や近親者が足の観察をして、患者さま自身では見ない、見えない、気づかない足のトラブルに早く気づいてケアをしてあげることが最も重要になります。 足は心臓のように大がかりな検査は必要ありません。患者さまの素足をさわって皮膚の色や温度をチェックし、「冷たい」「足の指の色がおかしい」などの症状があれば、足の動脈がつまっている可能性があります。また、腕と足首の血圧を測り、腕より足首の血圧が低いときは足に動脈硬化が起こっていることがわかります。こうした視診や触診、検査で閉塞性動脈硬化症の疑いがあるときは、超音波、CT、MRIなどでさらに詳しく調べ、治療に繋げていきます。

前任地の病院における下肢切断の年次推移

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足を守って、命を守る。

閉塞性動脈硬化症の治療では、初期の場合は運動療法と薬物療法が選択されます。これらの方法で改善しない場合、あるいは重症化している場合は、カテーテルによる血管内治療またはバイパス手術で血行を良くします。そこに運動療法や薬物療法を組み合わせれば、足の切断は大幅に減らすことができます。 動脈硬化は全身の病気ですから、足の血行障害は心筋梗塞や脳卒中を予知する重要なサインにもなります。足病変がみられる方は、できるだけ早く適切な診断と治療を受けることが大切です。

熊田先生からメッセージ

足は自分を支えてくれる大事なもの。皆さんも、ときどきはさわってあげて「冷たい」とか「痛みやしびれがある」「傷が知らないうちにある」ということがあれば、すぐに循環器内科、あるいは血管外科の医師にご相談ください。
松波総合病院 心臓血管外科センター センター長 熊田 佳孝

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心臓血管外科医として多くの手術を手がける傍ら、2003年には「日本フットケア学会」を立ち上げ初代理事長を務めるなど、フットケアの正しい知識と啓発・普及を目指して精力的に活動。
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