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心臓血管外科センター センター長:熊田 佳孝

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松波総合病院 心臓血管外科センター センター長 熊田 佳孝 略歴はこちら

日本では血液透析療法を受けている方が年々増え続け、現在では30万人に達しています。透析を受けている方は全身の動脈硬化や免疫力の低下が進み、合併症を併発するリスクが高くなります。中でも心臓病は最大の合併症で、心不全や心筋梗塞が原因で亡くなる方は全体の30%にものぼります。そこで、長年にわたって透析患者さまの合併症対策に取り組んできた心臓血管外科の熊田佳孝先生に話を聞きました。

慢性透析患者数の推移

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透析患者の生命を脅かす「心臓疾患」

心臓のまわりを取り囲み、酸素や栄養を送る役目をする血管(冠動脈)が動脈硬化によって狭くなる病気を「冠動脈疾患」といいます。透析患者さまの60~70%が冠動脈疾患を発症しているという研究報告もあり、一般の方より動脈硬化の進行が早いことがわかっています。また、近年は糖尿病が原因で動脈硬化がはじまり、その結果のひとつとして腎臓病となり透析をはじめられる患者さまが増加しています。腎臓には身体に不要な老廃物を血液中からろ過する働きがありますが、腎臓病によってそれが十分にできなくなると、身体全体の老化が進んで血管だけでなく様々な臓器に障害が出てきてしまいます。当然、心臓への負荷もかかりますので、糖尿病が原因で動脈硬化が進み、腎臓病となって透析をはじめられる患者さまには心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症を発症するリスクが高まるのです。

透析患者における死亡原因

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心臓死を防ぐためには、小さな変化も見逃さない。

このように透析治療を受けている方は心臓死のリスクが高いので、初期症状を少しでも早く見つけて、その芽を摘み取ることが重要です。そのためには心電図、心エコーなどの検査を定期的に実施すること。これらの検査で気になるところがあれば心臓カテーテル検査を行います。 また、糖尿病による透析患者さまは、狭心症や心筋梗塞の発作を起こしても強い痛みを感じない場合が多いので、透析に従事するスタッフ全員が高い意識をもち、患者さまのちょっとした変化も見逃さないように注意することが大切です。足の血圧を測るだけでも心臓や脳の異常が見つかり、早期治療に繋げることができます。

病院全体で、透析合併症の予防・早期発見を。

心筋梗塞や狭心症の治療には、循環器のカテーテル治療と、心臓血管外科の冠動脈バイパス手術があります。私自身、前任地の病院で年間約100例の心臓手術を行いましたが、その大半が透析患者さまです。いずれも血管の荒廃が進んで手術が非常に難しい状態でした。それでも、一般的に9%と言われる透析患者さまの手術死亡率を3%弱に押さえられていたのは、病院全体で透析合併症対策に取り組み、合併症の早期発見、早期治療に努めていた結果だと思います。症状が悪くなってからの手術では手術成績は上がりませんし、予後にも悪影響を及ぼしますから。 心臓病は生死に関わる危険な病気です。患者さまには自覚症状がなくても早めの検査を受けていただく。そして、診察した先生は少しでも異常を察知したら循環器内科に診療依頼する。透析患者さまの命と生活を支えるためにも、病院全体でそういう流れができればいいなと考えています。
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