医療情報

肩関節は人体で最も大きな可動域を持つ関節であり日常生活に必要な上肢のあらゆる運動の土台として重要な働きを果たしています。肩関節は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋に包まれており各筋の腱性部分は共同腱として一塊となり板状にみえることから”腱板”と呼ばれます。腱板は肩関節を安定化させる重要な働きがあります。
腱板は上腕骨と肩峰の間にあるため磨耗、変性を起こしやすい部分として知られています。肩峰の下には腱板を保護するために滑液の入った袋があり”肩峰下滑液包”と呼ばれます。しかし日常的に繰り返して生じる衝突によって滑液包に炎症が起こり痛みを生じることがあります。また磨耗が進行し脆弱になった腱板に外力が加わったりすると腱板断裂が生じます。ただし腱板断裂があってもすべての方に症状があるわけではありません(40歳以上の1割程度に腱板完全断裂があるが、痛みがあるのはその半数程度)。 安定した肩の動きができていれば肩峰下滑液包炎は起こりません。また腱板に断裂があっても代償運動(他の筋肉の働きをうまく使うこと)が可能であれば、痛みも、機能障害もほとんどありません(この状態になれば必ずしも手術は必要ありません)。手術前も後もリハビリが重要です。 “腱板修復術”および”肩峰形成術”は基本的には関節鏡で小切開を4-5ヶ所加えることで行います(鏡視下手術)。 “腱板修復術”:骨に縫い寄せるための”アンカー(錨)”といわれる器具で腱板を極力もとの位置に逢着します。腱が弱い場合には一部切開を広げて縫合を補強することがあります。また大断裂の場合には腱移植を必要とします。 “肩峰形成術”:肩峰下滑液包での衝突を回避するため肩峰下を削ることで間隙を広げます。同時に衝突に関与する烏口肩峰靭帯も切離します。腱板修復の際には肩峰下での狭窄が断裂の原因となっているため肩峰形成を同時に行います。
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腱板大断裂の手術前後のレントゲン像。骨頭内に見えるのは縫合に使用したアンカー、断裂が大きくなれば使用するアンカーの数も増える(縫合数が多くなる)ことになります。

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腱板大断裂の関節鏡視像:矢印が退縮した腱板の断端、手前の球状に見えているのが上腕骨頭

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(本来の腱板付着部から大結節外側部)矢印に縫合糸および結紮部がみえる。

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骨頭は引き出された腱板で被覆されている(前の断裂の写真と同じ部位の鏡視像)。

手術合併症

  • 出血および輸血;内出血を含みおよそ50~100mlの出血が見込まれます。一般的に輸血は必要ありませんが、術後の貧血などによってはやむを得ず輸血が必要となることがあります。輸血が必要な場合は別紙説明書、同意書をお渡しします。
  • 感染症;手術のおよそ0.1%の頻度で感染症が起こります。感染の程度により再手術などを必要とする場合があります。 ※当院における肩関節鏡手術(2007.4.1~2011.8.31: 腱板断裂以外も含む)115例で術後感染0例(0%)です。
  • 深部静脈血栓症および肺塞栓症;エコノミークラス症候群として知られる血栓、塞栓症ですが上肢の手術での発生はほとんどありません。ただし動脈硬化、糖尿病、人工透析など血管病変が疑われる場合には注意が必要です。術後早期から肩以外は十分に力を入れて動かすようにしましょう。 ※当院における肩関節鏡手術(2007.4.1~2011.8.31: 腱板断裂以外も含む)115例で術後血栓塞栓症0例(0%)です。
  • 再断裂;縫合した腱板の強度が十分となる時期までは無理な動作は避けてください。軽作業に復帰するのが2~3ヶ月、5~10kg程度の重量物の上げ下げを含む作業の復帰が6ヶ月、重労働は10~12ヶ月が目安ですが、術後の可動域、筋力の回復によって変わります。特に高齢者の変性断裂で筋萎縮のある場合は筋力の回復に関して多くは望めません。術後のリハビリが重要となりますので、半年ほどは定期受診しその都度ご相談ください。 肩峰形成だけであれば1月ほどでとくに制限はありません。 ※当院における腱板修復手術(2007.4.1~2011.8.31)38例で術後再断裂の実数は不明ですが再手術を必要としたものは今のところありません。
  • その他;薬剤によるアレルギー性肝障害などの内臓機能障害、その他内科合併症(脳梗塞・心筋梗塞など)、神経麻痺・麻酔の遷延、ショックなど。ほかにもごく稀な不測の事態を含めて手術には危険性が伴います。
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