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鏡視下関節形成術(鏡視下バンカート修復術)

肩関節は人体で最も大きな可動域を持つ関節である反面最も脱臼しやすい関節です。一度脱臼してしまうと再脱臼を繰り返しやすい、いわゆる”癖になりやすい”特徴があります(反復性)。再脱臼率は40歳以上では10%程度ですが、20-40歳では60%、20歳未満では約90%と若いほど脱臼しやすくなります。 脱臼の多くは外力により肩の外転外旋位でさらに水平伸展を強制されることで前下方に上腕骨頭がはずれます。これにより肩関節前方の支持性に最も寄与する下関節上腕靭帯の損傷が生じることが反復性肩関節脱臼あるいは亜脱臼の本態と考えられています。 靭帯損傷のうち特に頻度が高い関節窩付着部断裂(70-75%)をバンカート損傷と呼んでいます。手術では基本的にこのバンカート損傷を修復します(バンカート修復術)。 バンカート修復術は基本的には関節鏡で小切開を3-4ヶ所を加えることで行います(鏡視下手術)。

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背側から関節前方を視たところ。関節唇とこれにつながる靭帯が弛緩して大きく開いている。

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修復後、矢印が縫合部分、この例では関節内全体で5カ所の縫合を行っている。関節大きさなどにもよるが大抵4-5カ所の縫合を要する。
関節窩に骨欠損が大きい場合は開創して骨移植が必要となる場合があります。また関節弛緩が著しい場合は切開して関節包の縫縮が必要となることがあります。
関節窩に骨欠損が大きい場合は開創して骨移植が必要となる場合があります。また関節弛緩が著しい場合は切開して関節包の縫縮が必要となることがあります。
  • images03 前方(烏口突起下)脱臼
  • images04 整復後:→に小骨片(骨性バンカート)がみられる。
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術後レントゲン:柔道選手など再脱臼の危険性の高い競技者では関節鏡での関節内手術に加えて、烏口突起を共同腱とともに関節突起頚部へ移行して固定(↑スクリュウ部分)することもあります。

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骨性バンカートであっても鏡視下に縫合による固定が可能です。ただし大きなものや骨片が吸収され欠損している場合は骨移植が必要です。
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陳旧性下方脱臼:糖尿病性神経障害があり痛みが少ないため1ヶ月間接骨院へ通院されていた。受診時、関節窩前下方で全体の1/3が欠損(→)となっており手術にて脱臼整復と腸骨移植を行った。上腕骨頭内のスクリュウは腱板縫合を行ったアンカー。

手術合併症

  • 出血および輸血;関節鏡手術の場合内出血を含みおよそ50mlの出血が見込まれます(骨移植などでは300mlほど)。一般的に輸血は必要ありませんが、術後の貧血などによってはやむを得ず輸血が必要となることがあります。輸血が必要な場合は別紙説明書、同意書をお渡しします。
  • 感染症;手術のおよそ0.1%の頻度で感染症が起こります。感染の程度により再手術などを必要とする場合があります。 ※当院における肩関節鏡手術(2007.4.1~2011.8.31: 脱臼以外も含む)115例で術後感染0例(0%)です。
  • 深部静脈血栓症および肺塞栓症;エコノミークラス症候群として知られる血栓、塞栓症ですが上肢の手術での発生はほとんどありません。ただし動脈硬化、糖尿病、人工透析など血管病変が疑われる場合には注意が必要です。術後早期から肩以外は十分に力を入れて動かすようにしましょう。 ※当院における肩関節鏡手術(2007.4.1~2011.8.31: 脱臼以外も含む)115例で術後血栓塞栓症0例(0%)です。
  • 再脱臼;術後1年以内での再脱臼は10%程度といわれています。再建靭帯の強度が十分となる時期までは無理な動作は避けてください。軽作業に復帰するのが2~3ヶ月、コンタクトプレーを伴わないスポーツ復帰が6ヶ月、コンタクトプレーは10~12ヶ月が目安ですが、術後の可動域、筋力の回復によって変わります。術後のリハビリが重要となりますので、半年ほどは定期受診しその都度ご相談ください。 ※当院における脱臼手術(2007.4.1~2011.8.31)60例で術後再脱臼(2年以上の経過例を含む)2例(約3%)です。
  • その他;薬剤によるアレルギー性肝障害などの内臓機能障害、その他内科合併症(脳梗塞・心筋梗塞など)、神経麻痺・麻酔の遷延、ショックなど。ほかにもごく稀な不測の事態を含めて手術には危険性が伴います。
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